【婚活小説】2度と結婚情報サービスなんて

第2話 悲しいほどお天気

思えば一括資料請求は失敗だったかもしれない。
どうせ無料だからとあちこちのパンフレットを請求した。
おかげで勧誘の電話なども掛かってくる始末だ。

いま美穂の目の前には全部で6社の無料パンフレットが並んでいた。
このうち勧誘の電話をしつこくかけてきたのが3社。
この3つはもう候補からは外した。
パンフレットもちゃちで安っぽいし。

残りの3社のうち挨拶のようなメールを送ってきたのが2社。
1社は黙ってパンフレットを送って来ただけだ。
この3社はパンフレットもしっかり作られていて好感が持てた。

美穂はこの3社すべてに説明を聞きに行ってみることにした。
3つ回るとそれぞれを比較できて良し悪しがハッキリするだろう。

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よく晴れた日曜日だった。
デート日和といていい。
でも美穂はそんな相手もいないので、
今日は結婚相談所めぐりだ。

午前に1社。
午後からは2社をまわる。

午前10時に約束している1社目のことろが美穂の本命だった。
ここは一番パンフレットがキレイだった。
サービス面でも期待できるように思える。
料金も3社中で一番良心的だ。

美穂は9:50分に到着して受付に自分の名前を告げた。
オフィスは思っていたより狭くて古かった。
まあパンフレットどおりとはいかない。

個室のようにパーティションで区切られたブースがいくつかあり、
そのうちのひとつで待つように指示された。

日曜日ということもあり、
他にも説明を聞きに来ている人がいた。
ここの会員女性らしき人も訪れていて、
スタッフに相談事のようなことをしている。

10時をまわった。
しかし美穂の担当の人は現れない。
日曜日は忙しいのかもしれない。
平日会社の帰りに来ればよかったのかも。

それからさらに15分が経った。
まだ来ない。
約束の時間を15分オーバーしてる。
なのに何の説明もない。

帰ろうかどうしようか迷うところだ。
こんな扱いを受けて入会する気にはとてもなれない。
でもここは第一候補だ。
何か事情があるかもしれない。
もう少し待ってみるべきか。

「ごめんなさい。遅れちゃんて」
太ったおばさんがブースに入って来た。
美穂は立ち上がって丁寧に頭を下げて挨拶をした。
おばさんはちょっと会釈しただけだった。

「えーと、河合美穂さんでしたよね」おばさんは手元の資料に目を凝らす。「36歳で・・・職場はこのへん?」
「ええまあ近いといえば近いですね」
遅れた理由の説明もなく、おばさんは話を進める。
やはり帰るべきだったのかも。

おばさんは結婚相談所のシステムを順番に説明していった。
内容は比較サイトなどに書かれていたとおりのものだった。
しかし料金の説明に差し掛かったときに、
比較サイトには書いていなかった話が飛び出した。
登録料みたいなものが必要で、
入会金と合わせて初期費用は16万円掛かると言われた。

話が違うではないか。
初期費用は10万円以下だったはず。
公式サイトやパンフレットにはそう書いてあった。
比較サイトでも登録料に触れてるサイトはなかった。

ここを第一候補にしたのは3社中で一番安かったからだ。
それなのに初期費用で16万円なんて。

美穂はその点をおばさんに問いただした。

「えっ、登録料のことはちゃんと書いてますよ。ホームページにも」
おばさんはパソコンのモニターを美穂の方に向けて、
自社のホームページを映しだした。
料金のついて書かれたページを表示させて美穂に見せる。
「ほらちゃんとここに書いてるでしょ?」
見ると確かに別途登録料がかかりますとの記述がある。
ものすごく小さく。

そのセコい表記方法に美穂は思わず笑ってしまった。
もうそれ以上問い詰める気にはなれなかった。
美穂はそのまま席を立ち、
お礼を言って店舗をあとにした。
おばさんは引きとめようとしたが、
無視してそのまま外へ出た。

雲ひとつない青空だった。
「悲しいほどお天気」
たしかそんな歌があったっけ。
どうでもいいことが頭をよぎった。

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せっかくのお天気なので昼食は公園で食べることにした。
コンビニでパンを2つと飲むヨーグルトを買い、
近くの大きな公園に入った。

広々とした公園ではあるけど、
日曜日とあってカップルや親子連れで賑わっていた。
芝生にシートを敷いてお弁当を広げている人なんかもいる。

美穂は噴水広場のベンチに座り、
買ってきたパンを食べた。
噴水のそばでは子供たちがはしゃぎまわっている。
それを近くで両親が見守っている。

最近はカップルより親子連れを見る方が辛かった。
以前は街でカップルを見かけると、
独り身の自分が惨めな気持ちになったが。
今は子供を連れた若い夫婦が一番美穂を惨めな気持ちにさせた。

噴水から吹き出す水が太陽を反射してキラキラ光っていた。
噴水も親子連れも眩しく見えた。
悲しいほどお天気だった。

でも晴れの日はこれが最後ではない。
また何度でも今日のような青空は訪れる。
そのとき自分も結婚して家族と過ごせていたらいいではないか。
午後から頑張ろう。
今行動しないと、
お天気はずっと悲しい色のままだ。


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