【婚活小説】2度と結婚情報サービスなんて

第7話 即閉じ

36歳の公務員の人の申し込みをOKすると、
彼とメッセージのやり取りをするめの掲示板が開設された。
2人専用の掲示板だ。
これを使ってこれからは直接メッセージを交換しあう。

さっそく掲示板に返事を書いてはみたものの、
相手の顔がわからないのは不安だ。

このあいだオリエンテーションに行ったときに、
都内の30代後半男性は全員チェック済みだ。
あの中に彼もいたはずだ。
どれが彼だったのだろう?

誰一人魅力的な男性がいなかったことに幻滅したけど、
彼もその中のひとりなのだ。
あまり容姿は期待しない方がいいだろう。

でも性格のいい人かもしれない。
年収は美穂より多いし、
公務員という安定感抜群の職業に就いているのがいい。
都内の税務署に勤めてるらしい。

同い年なので話が合うかもしれない。
容姿だって意外と悪くない可能性も残っている。
写真写りが悪い人だっているだろう。

このあいだ写真を見て気づいたのだが、
男性会員の中には写真館で撮った綺麗な写真を使っていない人も多かった。
オーネットの店舗でスタッフに撮ってもらったような写真を載せている人がけっこういた。
旅行か何かのスナップ写真を載せている人もいた。
実物より悪く写っている男性会員は、
けっこういるのかもしれない。

どんな人にしろ自分のことを気に入ってくれた人だ。
感謝しないといけない。
会報誌にはたくさんの新会員が紹介されている。
その中で自分を選んでくれた人だ。
どこに惹かれたのかわからないけど、
せっかく申し込んできてくれた人だ。
邪険に扱ってはいけない。

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36歳の公務員にメッセージを送った翌日、
仕事が終わって家に帰ってみると、
早くも彼からの反応があった。

彼がどのようなメッセージを送ってくれたのかワクワクしながら、
美穂はオーネットのホームページを開いてみた。
すると掲示板が消えて失くなっていた。
彼からの返事はなく、一方的に掲示板を終了してきたようだ。

思いもよらぬ出来事に美穂はうまく事態を飲み込めなかった。
ホームページのエラーか何かだろうか?
しばらくしたら掲示板は復活するのだろうか?

いや違う。
36歳の公務員は自分から掲示板を終了させたのだ。
一通のメッセージのやり取りもしないまま。

でもなぜだろう?
会報誌イントロGを見て向こうから申し込みをして来たのだ。
それに対してせっかくOKの返事をしたのに、
翌日には何の返答もないまま向こうからコンタクトを終了させてきた。

いったいこれは何?
彼はサクラ?

モヤモヤした気持ちを抑えられず、
美穂はオーネットに問い合わせてみることにした。
何が起きているのかを知りたかった。

遠藤が出てくれることを期待したが、
応対してくれたのは別のスタッフだった。
遠藤はすでに帰宅したらしい。
確かにもう遅い時間だ。

仕方がないので美穂は今回の件をそのスタッフに話して聞かせた。
向こうから申し込んで来たのに、
次の日には一言の説明もないまま一方的に掲示板を閉じたことを。

「河合様は写真の公開設定はどうされていますか?」
「写真の公開設定?」
「掲示板が開通したら自動的に相手の方へ写真を公開するように設定されてますよね?」

確認すると確かにスタッフの言うとおりだった。
掲示板開通と同時に写真の閲覧も許可する設定になっていた。

「掲示板が開通して、お相手の方は河合様の写真をご覧になったのでしょう。その上での判断だと思います」

会報誌イントロGには美穂の写真は載っていない。
36歳公務員は美穂の外見を知らないまま申し込みをしてきた。
でも掲示板が開通し、相手のパソコンに美穂の写真が表示されるようになった。

そういうことらしい。

写真を見てすぐに掲示板を閉じた。
一言の説明もなく、一方的に。

怒りと憤りが頭からマグマとなって今にも噴火しそうだった。
失礼にも程があるではないか。
自分から申し込んできておきながら、
写真を確認してすぐ掲示板を閉じるなんて。


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