【婚活小説】2度と結婚情報サービスなんて

第8話 紹介された男

掲示板を即閉じされて以来、
ふたたびオーネットのことが嫌になった美穂は、
しばらくホームページを開くことなく過ごしていた。

休日の日曜日、暇だったのでひさしぶりにのぞいてみると、
会報誌経由でまた大量に申し込みが来ていた。
前回に加えて更に30件ほど来てる。

でもまた即閉じされるのではないかと考えると、
返事を出そうという気にはなかなかなれない。

美穂は自分のプロフィールページを開き、
載せている写真を確認する。
入会手続きの日に写真館で撮ってもらったやつだ。
驚くほど綺麗に撮れている。
でも36歳の公務員の彼はこれを見て即閉じしたのだ。
ショックだし自信もなくした。

今日は定期紹介が届く日のようで、
おすすめ会員が3人届いていた。
開いてみると、3人共悪くないように思える。

こちらの希望条件にマッチした人だけが定期的に送られてくるシステムだ。
相手の条件にも自分がマッチしてないと送られてこない。
つまり相思相愛なのだ。条件面では。

でも写真がないので顔はわからないが。

顔がわからないというのは不便だ。
セキュリティー面では安心なのだろうが、
婚活の面では不便なだけだ。

オリエンテーションのときに一応写真をざっと見てきたので、
あの中にいた人たちだろうとは思う。
容姿は期待しない方がいいだろう。

3人の中でひとりだけ興味のわく人がいた。
入会のときに遠藤が見せてくれたあの東大出身の国家公務員だ。
財務省とかに勤める超エリートかもしれない。
年収が1500万円だ。

この人だけ申し込んでみようか。
会報誌はもう懲り懲りだ。
今度はこの定期紹介を利用してみよう。
一応相思相愛の相手だ。
こちらの方が上手くいくかもしれない。

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申し込んでから1週間が経った。
でも何の音沙汰もない。
忙しいのだろうか。
あるいは迷っているのだろうか。

そうこうしているうちに別の人から美穂へ申し込みがあった。
定期紹介経由だ。
美穂のところに来た3人とはまた違う人だ。
向こうにだけ美穂が紹介されたらしい。

33歳の会社員。
美穂より3歳も年下だ。
おかしいなと思った。
美穂の希望年齢は36歳から39歳だ。
年下は対象外なはずだが。

基準の曖昧さに疑問が生じたが、
彼自体はなかなか良さそうな人だった。
「年下で頼りなく思えるかもしませんが、よろしくお願いします」
そう書かれてあった。
オーネットの代わりに彼が謝ってくれていた。
謙虚で礼儀正し人に思えた。

美穂は彼とメッセージの交換を始めることにした。
東大出は全然返事を送ってこない。
このまま何もせず待っていても事態は進展しないだろう。

前回のことがあったので掲示板が開設されるときはドキドキしたが、
ありがたいことに即閉じされることはなかった。
それどころか「お若く見えますね。30歳前後に見えます」などとメッセージで書いてきた。

掲示板が開設されたときに彼の写真も自動で閲覧出来るようになった。
プロフィールページに写真が表示されるようになっている。

33歳の年下の彼は正直なところ見た目はイマイチだった。
太ってるし目が小さくて鼻も低い。
全然魅力的な部分がなかった。

でも掲示板に書かれる文章だけはしっかりしていた。
頭は良さそうな感じがする。
文章力もあるのだろう。
営業の仕事をしているというので、
コミュニケーションを取ることには慣れているのだろう。

東大出の人からは結局なんの連絡もなかった。
お断りのメッセージすら来ない。
断るなら断ればいいのに。
待てばいいのか待っても無駄なのかわからないではないか。
自分勝手な人だ。
いくら忙しくてもお断りの処理をする時間ぐらいはあるはずだ。

即閉じの人といい、申し込みを放置する人といい、
オーネットにはろくな人間がいない。
それを考えたら年下の33歳の彼はマシだ。
年下だけど礼儀やマナーをきちんとわきまえている。

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33歳の彼とのメッセージのやり取りは、
それから1ヶ月ほど続いた。
美穂は早く実際に会ってみたかったけど、
彼からはなかなかそういう話は出なかった。

掲示板でお互いのことを話し合う日々を
1ヶ月もだらだら続けてきてしまった。
さすがに痺れを切らした美穂は、
自分から面談を切り出してみた。
しかし彼の返答ははっきりしない。
もう少しお互いを知り合ってからとかなんとか。

もう十分お互いのことは話したように思えるが、
彼はまだ足りないと感じているらしい。
なんだか煮え切らない人だ。

美穂は仕方なく彼の意見を尊重した。
決心が着いたらそのうち向こうから会おうと言ってくるだろうと思い、
そのまま掲示板でのやり取りを継続した。

しかし掲示板開設から2ヶ月たっても、
彼は会おうとは言ってこなかった。


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